昔々…そいでもって、ある意味そんな昔じゃないかもしれない(なんだかとってもメタですね!)あるところに、忍術学園がありました。
忍術学園とは、その名前の通り忍者を育てる学校です。

その学校に、一人のお姉さんが住んでいました。
明るく優しく、ちょっとお茶目で割と常識知らずで、時々毒舌家。
にこっと笑うととっても可愛らしい、学園イチの人気者になっちゃったお姉さん。
その名をといいました。

ある日さんは学園の正門で掃き掃除に熱中していました。
舗装された道路ではないので、ざかざか掃いていると色んなものが飛んでくるのです。
別に厳密に綺麗にする必要はないのですが、掃いても掃いてもゴミがなくならない状況に何となくムキになってしまっていました。

「このっこのっ! …ええい小賢しい!! 逃げるなぁっ!!」

何だか不穏な発言ですが、幸いにも誰もそれを聞く人はいませんでした。



―――と思ったらいました。
正門を見渡せるような木陰から、赤い忍び装束のおじさん(もしかしたらお兄さんもいるのかもしれませんが)が4人ほどホウキでゴミと戦うさんをじぃっと観察しています。
その目には全員丸いサングラスが掛けられていました。
そう、彼らは泣く子も黙る(というより何となく笑い転げそうな)ドクタケ忍者隊です。


「あの娘さんか、あの剣豪野牛金鉄の孫っていうのは」
リーダー格の風鬼はちょっぴり腰が引けています。さんの剣幕に少しだけびっくりしたようです。
「そうみたいだなー…ええーと、確か名前は、〜…なんだっけ?」
だったかな。お頭が間違えてなけりゃだけどな」
名前が出てこなかったらしい雨鬼に、雲鬼が続きます。
そうそう、そんな名前だった! と顔を輝かせる雨鬼は更に続けました。
「忍術学園で一番の人気者って噂だよなぁ、あんなに綺麗な子なんだ、それもわかる」
と深く頷いて、暁鬼に目配せします。
それに気がついた暁鬼は、「準備できたぞ」と風鬼にささやきました。
「――よし、作戦開始だ!」
風鬼の合図に、ドクタケ忍者隊の4人はひとつ頷きあったのでした。







チキチキ救出大作戦!
その1 マニュアル命にご用心







さてそんなドクタケのみなさんのやり取りなど知るはずのないさんは、とうとう巨大な石を学園の塀に追い詰めていました。

「ふっふっふ、年貢の納め時だぞ覚悟しろ…」

はたから見ている限りだとどうしようもなく悪役のセリフです。何だかちょっと暗い微笑みを浮かべながら、じりじりとホウキを振りかざし、

「とぉりゃああぁぁああぁぁあっ!!!」

だいぶ気合が入った雄叫びをあげて振り下ろしました。最早掃除に必要な動きではありません。
しかし、そのホウキが地面に着くことはありませんでした。


「「「「どっこいしょー!!!」」」」


ばっさぁ!!


「みぎゃあぁあぉぉおお!?」

何とドクタケ忍者隊が、ムシロでさんをぎっちり簀巻きにしてしまったのです!
驚きのあまり、さんはいっそ天晴れと褒めたくなるほど色気の欠片もない悲鳴をあげました。
一体何事が起きたのか皆目見当がつきません。だけど、どうやら何者かに捕まったんだろうという事だけは何とか理解できました。

「だ、だれかっ、助けて…! だれかぁっ…」

忍術学園でお仕事をしてるといってもさんは俗に言うところの一般ピープルでした。
くわえて結構な運動音痴だったりもして、自力で逃げ出したりなんていうことは無理です。ちょっと救いようがない気もしますが、そういうものでもいいじゃない。
しかしさんの助けを呼ぶ声は、不幸にも誰にも届きません。
それもそのはず、今日は学園の先生・生徒総出で兵庫水軍のみなさんのところへ見学に出かけてしまっているのです。残っているのは事務員と食堂のオバちゃんぐらいしかいません。
さんは絶体絶命のピンチでした。

と、そこに。



「待てっ!!!」



鋭い声と共に、颯爽と忍び装束の人影が現れました。
その胸に、

【事務】

とまばゆく染め付けられた忍術学園屈指(?)の事務員、小松田くんがキリっとさんとドクタケ忍者隊を睨みつけています。

「「「「むっ! 貴様は事務員の!!」」」」

ドクタケのみなさんはむむぅ、と難しい顔をして、さんを頭上に掲げたまま小松田くんと対峙する格好になりました。

「こ、小松田くんっ!!」

これにはさんもパッと顔を輝かせました。
小松田くんかっこいい!! さんの中の小松田くん評価ゲージがギュモモモモッという音を立ててアップしていきます。
倍率ドン、更に倍! 気分は大橋○泉でした。


ですが、さんは忘れていたのです。








―――彼が、【小松田秀作】であることを。












「外出するなら出門票と外出届を書いてくださ〜〜い!!」







………。


こ、


コンチクショウ……!!!



さんの心の中のさん(ややこしいですね)は、ズシャア…と両膝をついてうな垂れました。
さっきまでうなぎ登りだった小松田くん評価ゲージが、ス゜ヌ゛ヌ゛ヌ゛と何だか嫌な音と共に勢いよく下降していきます。
そんなさんをさしおいて、

「あ、じゃあオレ代筆する〜」

と、雨鬼が笑顔で小松田くんに対応しています。

「はーい、お願いしまーす」

小松田くんも小松田くんで、さっきまでの迫力はどこへやら。物凄いにこやかに雨鬼に筆を差し出しました。
さらさらさらさらららら〜〜〜
軽やか〜な筆捌きで雨鬼が書き込んだ書類を、小松田くんはにこにこと確認し、

「あっ、ここに代筆しましたってことでサイン書いてもらえません?」

とか何とか言っちゃってます。

「はいはーい、えーと、代筆者……ドクタケ、忍者隊…雨、鬼…、と」
「ありがとうございまーす」

代筆でもオッケーなのかよっ!! とさんは突っ込みたかったのですが、両手は体ごとすっかりムシロに包まれ、いつの間にか猿ぐつわも噛まされて喋ることもままならなくなりました。

「……えー、と。…はい、確かに。」

トントン、と書類をそろえ小松田くんは朗らかに言いました。

「それじゃ、いってらっしゃーい」


「「「「いってきまーす」」」」




「ふ、んむっ、むが〜〜〜っ(小松田くんのアホぉぉぉおおおぉぉぉ!!!)」

見送る小松田くんへ全員で手を振り返すドクタケ忍者隊のみなさん、そしてその頭上で簀巻きにされたさんの声にならない叫びが、近くの山々に響いたのでした。



さてさて、さんは一体どうなってしまうのでしょう!






→続いちゃう。






無茶なこと始めてしまった……orz
最終的にはお相手選択になると思われます。
現在の予定としては、
土井先生・利吉さんは確実、は組のよい子は十把一絡げで
五年生と六年生は個人にバラけるかコンビでまとめるかと言った具合に悩み中。
…何せ三郎くんでネタが出来ているからどうしたものやらorz