以下、ユーリさんを泣かせたいと盛り上がった私の記録(オチはありません)





ユーリさんを泣かせ隊 そのいち (後悔するの巻)
※重傷的表現、流血注意


魔導器がなくなった今、医師による治療が出来なければ人は死ぬ。


仕留めたと思ったんだ。一匹残らず、綺麗に。
珍しく俺とが二人だけで依頼を片付けることになった。生粋の戦闘要員ではない幼馴染兼恋人を、魔物と戦わせるのは些か不安があって、だから俺は、その時も一人で剣を振るっていた。
思い返せば、少なからず、慢心はあったんだろう。剣についた血を払い、鞘に収めようとして、ズルリと起き上がった、死んだふりをしていたらしい獣に気づかず、


「ユーリ!」


ドン、と衝撃。予想外の攻撃に尻餅をついて、何が、と一瞬自失して、やけにゆっくり視線を動かして……の腹に強く食い込む牙を見た。ぼたぼたと滴り落ちる赤い液体、それは、の血で、ズルズル引きずられるの体にみるみるうちに擦り傷が増えて、血が、草むらに赤黒い血の道が、


「て、めぇぇぇ!!」


視界が真っ赤に染まった一瞬の後、力任せに抜き放った剣を振り下ろした。断末魔が空に溶ける時間すら惜しくて、だらしなく開いた魔物の顎の中からを引っ張りだす。旅装束のコートがぼろぼろに裂け、そこから覗く白いはずの腹が赤くて、流れ出るそれを止めようと腹に空いた穴に手を当てても隙間をぬって赤が滴り落ちて、少しずつ、呼吸が弱まっていくのがわかって、


、おい、しっかりしろ、!!」




必死に呼んでも、目を覚まさなくて。




―――それから後のことは、おぼろげにしか覚えていない。多分、奇跡的に仲間の誰か(……恐らくジュディだと思う……)が様子を見に来てくれて、半狂乱の俺を抑えながら病院に運んでくれて、今は何とかギリギリのところをさまよっている、んだと、思う。何せ、自分の記憶に自信がない。


常より白い、血の気のない顔のまま、静かに呼吸を繰返すの手を取る。血が抜けたせいか、その手は普段握っている時の温度より冷たくて、思わず俺は力のない手を握りしめてうなだれた。途方も無い、を喪うかもしれないという恐ろしさ。最悪の方向にすすむ思考を振り払いたくても、絶望の片鱗が俺を放すことはなく。
自分の慢心が招いた、この現状に…………全身を覆い尽くす悔恨と恐怖に、視界が揺れ始めるが、それさえ気にならない。…………俺が泣くことでが助かるのならいくらでも泣いてやる、のに。
は、目を覚まさない。ユーリ、と呼ぶ声もない。それがどれだけ……寂しくて、恐ろしい事か。
ああ、くそ、なぁ、頼む。俺お前がいないと立てる気がしないよ。なぁ、


「頼む、お願いだ、死なないでくれよ……」


次々落ちる涙が、白いシーツに吸い込まれていった。














ユーリさんを泣かせ隊 そのに (地獄のプリン変)(誤字にあらず)



「フレンこれはないよ流石に酷いよなんなのプリンに恨みでもあんのお前なぁ」


タバスコがたっぷりかけられたフレンお手製プリンを食べたユーリが、泣きながら切々と訴えてくる。涙を見せるユーリなんてここ数年単位で見てもない、まさにレア中のレアなはずなのに、何だろうこの大盤振る舞い。


「いや、こうしたほうがきっと美味しいと思って……」
「甘味に辛味かけて何がしたかったんだよむしろお前が食えよ俺は普通の甘いプリンが食べたかったんだよ」
「美味しかったんだけどな……」
「食ったのかよ食ってんじゃねえよむしろ俺に出さずに完食しろよなんだよプリン食うつもりでプリンしか受け付けなくなった俺の腹に謝れよ」
「すまない、ユーリの腹」
「本気にすんなよなんなの俺の腹は俺と別部分なのかよ」
「いや、でも…………その……」


ユーリの涙に気圧されたフレンが、弱々しく弁解しているも、ユーリの怒りとショックは収まらないらしい。仕方ないと思う。予想にない味がする食べ物なんか食べた日にゃ多分私も怒る。あるいは泣く。


「とろける甘味と容赦なく舌に突き刺さる辛味のコラボが不協和音をオーケストラで大絶賛演奏中だよほんとになんだってんだよフルコンボ食らった後にバーストアーツから秘奥義まで叩きこまれた俺の舌のダメージは計り知れねえよ」


それはえげつない。「そ、そうか……」と覇気をなくした騎士団長は肩を落とし、甘味大好きな黒尽くめはひっくひっくとえづきながらほんのり赤く染まった(そして一口分だけ欠けた)ぷるぷる揺れるプリンを親の仇か何かのように睨みつけている。えらいこっちゃ、プリン一つでこんなカオス。


「じゃあ、口直しにプリン作ってくるから待ってて」


幼馴染以外誰も立ち入れないだろう異空間と化したこのキッチンに、私は仁王立ちして告げる。
その瞬間、打ちひしがれていたユーリの顔がパアアアと輝き、ありがとなああマジ愛してる!! といきなりヒシッと抱きしめられた挙句、今度は嬉し泣きで咽びだした。いやいいんだけどね、…………皆、入り口から見てるよ?






(/'ω')/ お粗末さまでしたっ \('ω'\)