※ぷち小話3つ詰め合わせです。 全力でxxxxxxしてもらいました、その1 桜色の頬を両手でそっと包んで、じ、と見つめて。僕はそっと顔を近づけた。 途端、キスされると感じたらしいがぎゅう、と目を瞑った。 それはもう、眉間に皺が寄る勢いで、ぎゅうぅっと。 唇もきゅっと引き結んで僕を待つその様は、何だか僕の心の中の何かを鷲掴んでしまった。 普段目を閉じているから気付かなかった。彼女はこんなに一生懸命な顔で、僕からのキスを待っているのか。 何ていうか、なんと言おうか。 (可愛い……) 思わずそんな形相の彼女を見続けてしまうほどに、キスを待つ彼女の顔は可愛かったのだ。 おさえられないニヤニヤ顔を、いつまで経っても何も起きず不思議に思って目をあけたに見られて、が恥ずかしさのあまりにその場から逃げたりしたがそれはまたそれ。 どうせすぐに捕まえて、腕の中に閉じ込めて、真っ赤な顔で怒り出しても君がかわいいから仕方ないと囁いて。 が僕を抱きしめ返すまで、何度も口付けを送る結末は見えている。 全力でxxxxxxしてもらいました、その2 確かに、疲れた、と言ってしまった。ここ数日、との時間を作るために毎日深夜まで仕事していたし。 はその言葉に「じゃあ少しでもゆっくりしよう」とにっこり笑って言ってくれた。凄く嬉しかった。 だけど、これは、この状況は! 「寝辛くないかな」 頭上から振るの柔らかい声色に、何とかそんなことはないよと返したけれど。 頭の下に感じる絶妙な弾力の太もも、見上げた視線の先には胸の形に膨らむ服。 が何かの拍子に体をかがめるたびその柔らかな膨らみが頬に触れたり鼻に触れたり、もぞもぞと腰を浮かせて姿勢を直すたびに枕の柔らかさに体の奥で言いようのないものが疼いて、どうしようもなく落ち着かない。むしろこんなんで落ち着けるわけがない。落ち着けるものなら落ち着きたいが、僕だって男だから、あれやこれやと考えてしまうのは本能だ。 二人きりの自室。穏やかな空気の中、備え付けのソファで僕に膝枕をする。一応断っておけば、僕らは恋人同士で、触れることを咎められる間柄ではない筈で。 起き上がって抱きしめてしまおうか、いっそ押し倒してしまおうか。 悶々としてゆく僕にはお構い無しに、はほの赤い顔で僕の髪をゆっくりと撫で付ける。 そうして彼女は、少し躊躇いながら、言った。 「本当は襲って欲しくて誘惑してるつもりだった、って言ったら軽蔑する……?」 その言葉に僕は、目を見開いて。それからにこりと笑顔を作って返した。 ああ、それならば。躊躇も何もなく、君を抱き上げてベッドに連れて行こうかな。 全力でxxxxxxしてもらいました、その3 くぅくぅ、とすぐ傍からの寝息が聞こえる。僕の腕を枕にして、両手を添えるように並べて、彼女は夢の中だ。 時々むにゃむにゃと何某かを呟いて、猫のように体を丸める。寝顔は子供の頃とあまり変わらなくて、懐かしくて思わず笑みが浮かんだ。 おでこに唇で軽く触れる。起こさないようにゆっくり腕を引き抜くと、がうっすらと目を開けた。その表情はまだどこか夢うつつで、寝ぼけているだろうというのがわかる。 「起こしてしまったかい?」 何となく小声で尋ねると、彼女はぽやっとしたまま僅かに周囲を見回して、そして僕の手を見つけるとゆっくりとした動きで大事そうに両手で握りこむ。そのまま、ふにゃんと幸せそうに微笑んで、またくぅくぅと寝息を立て始めた。 どうしよう、と僕は顔を覆う。 誰に見られるわけでもないのに、真っ赤に染まったまま唇が緩んで仕方のない顔を覆う。 長い長い片思いの末、君と結ばれて、それだけで幸せだと思っていたのに。 そのあとに君から与えられるものがこんなにも愛おしくなることばかりだなんて思ってなかったんだ。
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