朝っぱらから政府のお偉いさんに嫌味を言われ苛つきながら笑顔でそれを流した午前中、それから新しい戦場に繰り返し出陣する皆のサポートや手入に追われ、夕方になってまたもや政府から嫌味のオンパレード。
このくそ忙しい時に暇なことだと作った笑顔からはみ出してしまいそうな怒りを堪えたりなど、ようやく殆どが片付き一息つけたのは、日もとっぷりと暮れて暫く経った頃だった。
流石に疲れ果てていたのか、思わず自室の机に突っ伏す。ひんやりとした天板に全身から力が抜けた。
…………きつかった、今日はとんでもなくきつかった。
けれどもまだ仕事が残ってる。ああでももう少しだけこうしていよう、残りの仕事は後もうちょっと。本当疲れた。ご飯食べたと思うけど記憶に残ってないってよっぽどだ。ああ、仕事やらないと。
などとぐだぐだ考えていると、私の髪をさらりとすく気配がした。
掠めるように頭皮に触れるぬくもりがくすぐったいけれど気持ちいい。
うっとりしていると目蓋が重くなってきたので、必死に目蓋をこじ開けようと努力していると、優しい指の主……一期一振が、困ったように琥珀色の瞳を柔く細めた。


「本日はお疲れ様でした。後は私が引き受けましょう」


気持ちは嬉しいけれどそれは駄目だよ、私の仕事なんだから私が終わらせないといけない。ふわふわした意識でそう抗議した、と思う。


「いいえ、どうかお休み下さい。顔色がお悪い。……弟達も心配しております故」


言葉が終わるか終わらぬかのところで、浮遊感に襲われた。
抱き上げられていた、と気づいたのはそのまま布団に横たえられた時。まっていちごさん、呼びかけようとしてそっと頬に触れた吐息と優しい熱に言葉が出なくなった。
ああもう、このひとは、ずるい。私が黙らざるを得なくなるのわかっててやるのだから。


「おやすみなさいませ、……良い夢を」


おきたら、しごとつづきやりますからね。


「ならば、主殿が起きられるまでに、私が全て片付けておくとしましょうか」


微笑みながら、私のより大きな手のひらでまぶたをそっと閉じさせられて、そこで私の意識は夢の淵に落ちた。