万屋からの帰り道、背中に夕日を受ける形で大将と手を繋いで歩く。
……細くて、華奢な手だ。
俺たちを呼び、使役し、慈しむその手を、今、俺の手で包んでいる。
――本丸までの帰り道、今こうやって繋がっている間だけは、皆の大将は俺だけの大将でいてくれる。
そう思うと、刀である筈の俺の胸がばくばくと音を立てた。素直に嬉しい。が、同時にどことなく気恥ずかしい。
目の前にひょろりと伸びた二人分の、丁度真中付近でしっかり繋がれている影が余計に面映く感じて、ついぞ無言になってしまってから、はや暫く。
無言の空間も悪くはないが、何か話さねばならない気がして仕方ない。何を話せば、とあれこれ考えているうちに、


「……ね、薬研、その、なんかこれ、照れくさいね」


大将が、繋がれた手を持ち上げ、眉尻を下げてふにゃりと笑った。


「確かに少し照れくさいな。…………手ぇ離したほうがいいか?」


同意して見せてから、思わず付け足すように尋ねる。
……もしかしたら、俺が浮かれ過ぎていて気づかなかっただけで、大将は途中から嫌がっていたのかもしれない。
そう不安になって、聞いてみたのだが。
途端、


「やだ」


即答で否定されて、目を丸くした。


「本丸じゃ、皆の目があるからこんな風にできないもの。本当はいつだって手を繋いでたいのに」


ほのかに頬を染めて、拗ねるように唇を尖らせる大将が、どうしようもなく可愛くて。



……ああ畜生、もう少しで本丸についてしまう。
あと少し、もう少しだけでいい、本丸までの道よ、無理を承知で頼む。延びてくれ。
大将に口付ける時間を、そして顔の熱が冷める時間のぶんだけ、どうか。