「おい、そこの女ぁ!」 世の中には随分乱暴に人を呼び止める人がいるもんだ、とは思いながらエステルと待ち合わせている敷地内のカフェに向かって足を速めた。呼ばれた人はさぞ迷惑だろうなぁ。 「そこの早足で歩く女ァ! キサマだ!」 他人事だと思ったら呼ばれていたのは自分と言うオチが待っていた。 仕方無しに振り向くと、前髪だけ金髪、他はピンクに染まった髪を振り乱しているちょっと奇抜な見た目の青年が頭一つ低いこちらをジロリと見下ろしている。謎の威圧感を前にしたは珍しく危機感を働かせて、半身後ずさった。 「…………私に、何か?」 「キサマ、ユーリ・ローウェルとフレン・シーフォの幼馴染だな?」 「そう、ですけど……、っぅえ?」 肯定するなり、右手を取られてその手に何かを押し込まれる。何だろうと手を覗き込むと、携帯のメールアドレスと番号と後は何か小さい文字が書かれたメモ紙がそこにあった。 「オレの名はザギ……女、ユーリ・ローウェルとフレン・シーフォに伝えておけ。オレはキサマらを逃がすつもりはねぇ、とな。ふはははははは、ははははははは!!」 謎の高笑いを挙げ、ザギと名乗った男はの視界からいなくなる。しばし呆然と立ち尽くした後、はもう一度渡された紙を開いた。先ほどはちゃんと読めなかった小さな文字に目をこらす。 “さんへ。 まずは突然呼び止めてすみませんでした。きっと驚かれたと思います。 お願いがあって声を掛けさせてもらいました。気を悪くされてなければ、どうかユーリ君とフレン君に次のように伝言をお願いします。 カラリパヤット同好会に参加しませんか? とお伝えください。 彼らの体捌きならきっと凄い使い手になれます。 それからよかったらオレとお友達になってください、メアドと番号お渡しします。連絡待ってます。 保育学部一回生ザギ。” …………世の中にはいろんな人がいるのである。 その後一応幼馴染二人に伝言を伝えてみたが、答えは揃ってNOだった。
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