一人で宿を出ようとして、フレンに見つかった。
一人で行きたかったけど、見つかった以上はきっと無理だろう。


「外に? ……僕も行こう。いいよね」


黒いインナーと麻のパンツ姿で帯剣というほんの少しチグハグな姿のフレンは、一度部屋に引っ込んで。


「……毛布?」
「うん。……きっと、長居するつもりだったんじゃないかと思ったから」


ああ、ばれている。ふかふかの毛布を小脇に抱えて笑うフレンには敵わない。




「寒くないかい?」
「うん、ありがとう」


人気のない広場の隅で、フレンと二人で毛布に包まって星空を見上げる。夜空に溢れるばかりの星の光の中、どうしても一人で泣きたかった衝動に駆られていた 筈の私は、しかし金色の幼馴染にそれを阻止されたことに対して心地よい敗北感すら感じていた。
きっと、それは。
フレンの、ごつごつとした剣ダコいっぱいの武骨な手が、私の手を優しく握ってくれるからだろうか。
それとも、青色の目がずっと、柔らかく微笑みながら私を見ているからなのか。


を一人で泣かせるほど、僕は甲斐性なしのつもりはないんだけどな」


そう苦笑するフレンの肩にそっともたれかかって、彼の熱を分けてもらう。
もらった熱の暖かさでほぐれた涙腺が、みっともなくぼろぼろと水を零し始めたけど、気にしない。


一人で泣かなくてもいいんだって、フレンが抱きしめて教えてくれているから。